デザイナーの市川です。
前回は、追憶の焼き鳥丼を食べたと思われる名も無き広場に辿り着いたところまでの話しでした。
そして、その広場にある飲食店の並びを端から歩いて見ていく。それぞれの店は茶屋のようになっているので店内を遮る壁はなく、店前には紙に書かれた垂れ幕にメニューが書かれているので、何を扱っているのかは一目でわかる。ラーメン、うどん・そば、焼きそば、おでん、カレーライス、うな丼、親子丼、天丼…定食屋にもありそうな何の変哲もないメニュー。しかし焼き鳥は見当たらない。焼き鳥定食はあったけど焼き鳥丼はない。
あれ?おかしい…と思いながらその場を2、3度行き来してしまう。焼き鳥丼なんて廃止されるようなメニューではないだろうに。そしてあれは幻だったのか?そんなわけはない。場所の思い違い?成田山参道にも焼き鳥丼を扱っている店は見当たらなかった。
そんなことを考えながら「何故なんだ?」が頭の中でごちゃごちゃになっている。と同時にお腹もすいたので何かを食べなくては、ここまで来たら何かしら食べないという切迫感。時計を見ると時間もそんなにない。参道に戻ってうな丼には時間がかかりすぎる…。そして、焼き鳥丼無き今、自分は何が食べたいのか?大いに迷ってしまった。
そんな時、特に呼び込みをすることなく店前に立っていたある店の(僕より歳上だと思われる)女主人(?)が、「何か探しているの?」と声をかけてきたのだ。
そこで僕は「以前、ここで焼き鳥丼を食べたことあるんですけど、そんなメニューありませんか?」みたいなことを聞いてみた。以前というよりは「昔」を使うのが正しいのだろうが、さすがに子供の頃のことと言うのは気恥ずかしく、とっさに「以前」を使ってしまった。まさか女主人も30数年前のことを言っているとは思わなかっただろう。「さあ?焼き鳥をご飯に乗せたもの?」と聞き返してきたので、「たぶんそんな感じだと…」とまたもや曖昧に返してしまった。
聞いた手前そのまま去るのもアレなんでここで昼食をとることに。前記したとおりここはオープンテラス…というよりはオープン茶屋。冷房はもちろんないけど、僕としてはガンガン冷房されているよりこちらのほうが好みだ。軒先の氷旗が揺れるくらいの風はある。
あんまり味は期待していないし、後の鹿島スタジアムで食べる分のお腹も残しておかなくてならないので山菜そばを注文した。あまりハズレはないだろうなということで温かいのを。それと冷たいビール。こんな風情に浸りながら独りで飲むビールはいい感じである。そして、期待していなかった山菜そばも少し個性的な味だったので更に気分は良くなってきた。
結局、焼き鳥丼の真相は分からずじまいだったが、現場に来たことと今は存在しないと分かったことは収穫か。過去に存在していたと分かったとしても味はもう分からないのだ。想い出のみの味になってしまったということだ。
この後、試合でレイソルは不甲斐ない敗戦をし、更に監督が(一時的だったが)突如辞任するというとんでもない事態になってしまったのだが、道中と試合は別に考えるのがアウェイ観戦には必要であると、またしても思わずにはいられない日となった。
(2年前は磐田まで行って6−1で負けたことも…)
終わり。