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「真行草」という三つの「型」に見る日本の美意識

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こんにちは。ディレクターの小林です。

ネタがない~というと、「茶道とか着物のことを書いたら?」と言われるのですが、
着物については記事を書けるほど知識はないし…茶道は好きすぎて、とりとめがなくなる!

ということで、仕事の役に立ちそうな話題に絞って、茶道の話をちょっとだけ…。

まだエディトリアルデザイナーだった頃、
紙面の設計は「3の倍数を意識して」と、教えられました(理由は長くなるので省きます)。
徹底して叩き込まれたせいで、今でも数で迷ったときは
「3」が選択肢として真っ先に脳裏にチラつきます。

 

そんなこんなで、元々「3」という数字に思い入れがあったので、
茶道を習い始めて「真行草」を知った時に、
「ああ、日本人は昔から 3 が好きなんだな~」としみじみと思いました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA茶道は、たくさんの「真行草」で溢れています。
端的に言えば、「真行草」は3段階の格式です。
華道にも「真行草」の教えがあるので、書道や剣道など、
日本の芸で「道」がつくものは「真行草」の考えは馴染みが深いのだと思います。

茶道の礼法では、お辞儀には「真行草」と3段階あり、襖の開け方も3段階あります。
茶道のお点前自体にも、相伝までいくと「真行草」があります。
茶室で使われる道具類…掛け軸・茶入・茶杓・花入れといった道具にも「真行草」の格があり使い分けています。
さらに、道具の格式に従って道具の扱い方(真行草)がかわるものもあります。
…と、挙げていけばキリがないほど!!

「真行草」は、3つの格式を示しますが、
「真が上等」とか「真の道具は高価」というわけではありません。
kotobankからの引用です。

最も格式の高く整った真と,その対極に位置する最も破格の草,その中間項の行を, 3段階の様式表現の用語

1つめの真は、基本となる型。
2つめの行は、基本を踏まえながらも異なるものを取り入れている。
3つめの草は、型破りなもの。

何かを考えるときに、まず「型」を知らないと「型破り」なものはできない。
面白いもの・かわったアイディアを求めるのであれば、まずは基本の「型」を知ることが大事。
…と、時々社内で話題にのぼります。これはすごく納得できます。

…しかし、茶道の場合、草→行→真の順で習うのです。
真から習ったほうがごちゃごちゃにならないのでは?と思うこともありますが…
上のお点前は相伝なので、上から習うわけにはいかないんですよね…。難易度も高いし…。

茶道は口伝なので、お稽古中には先生から
「そこで真の一礼」とか「帛紗を草に捌いて」とか「蓋は真の位置に」といった指示が飛びます。
型は先生に聞けば教えてくれます。
が、「なぜここは草の礼なのか」「なぜこれは行の扱いになるのか」ということは
お稽古の流れの中で自分自身で考えて会得してゆくのです。

きっと、日本中の和の芸事の道場で、
毎日のように「真・行・草」の呪文が何万回と唱えられているのでしょう…。

「真行草」について検索していて、面白い論文を見つけました。
「日本の伝統芸能における型論-真・行・草-」(大阪市立大学大学院 都市系専攻 修士論文梗概集
http://www.nakatani-seminar.org/kozin/syuuronn_kougai/ose.pdf

さらに、包み方にも「真行草」がありました。
美の壺 file147「和の包み」
https://www.nhk.or.jp/tsubo/program/file147.html

 

他にも、建物や日本庭園にも「真行草」があるようです。
芸事だけでなく、職人の世界でも使われている言葉なんですね。
格式・形式・様式を示す「真行草」の3文字が、
日本の文化の中にどれだけ浸透しているのか…興味が湧きます。
仕事などで職人さんにインタビューする機会があったら、リサーチしてみたいです!

 

今回は、これにて終了~!

 

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茶道を知らない方によく、「本を見て覚えればいいんじゃないの?」と言われますが
本になっているのは初歩のお点前だけです(それでも炉・風炉・特殊点前で何十種もありますが)。
本には手順の概要しか書かれていません。お点前の流れの確認には使える、という程度。
手や指の動かし方・位置といった所作の美しさに関することや、道具の扱い方などはすべて口伝です。
自分用にとったメモ書きを人に授受するのも禁止なのです。
500年も連綿と語り継がれているって…すごいですよね。

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