林静一といえばロッテの小梅ちゃんのイラストで有名であるが、それ(1974年発表)以前は、1967年に雑誌『ガロ』で作品が採用されてから主にマンガ家として活動している。
そのマンガの代表作と言えば『赤色エレジー』(1970〜71年)だろう。『ガロ』に1年ほど連載していた長編である。僕は長い間「赤色」を「あかいろ」だと思っていたけど「せきしょく」と読む。(本人はどっちでもいいと発言したことがあるらしいが…)
内容はアニメーターの一郎とトレーサーの幸子の同棲話しなのだが、最初に一読した時(高校生の頃)は話しの繋がりがよく分からなかった。のっけから任侠映画の高倉健っぽい人物が節をまわしている。アニメーションの一部のようなコマ割りが出てくる。唐突に一枚絵のイラストのようなコマが出てくる。ストーリーの流れはバッサバサに切られている。セリフが抜かれている等々、マンガ表現として先進的、実験的とも言えるだろう。
それでも何度か読み返すと、その分断されたコマの「間」が見えてくるのだ。小説で言えば「行間を読む」というような。そうなるとすんなり進むコマ割りのストーリーより、よりストーリーに潜む男女のエレジー(哀歌)を感じることができるというか。僕の場合は。
そして何度でも読めるので、読んだ年代によっても感じ方が違うようにも思う。
ちなみに、林静一のマンガデビュー以前は一郎と同じくアニメーター(東映動画など)であったが、『赤色エレジー』のような同棲の経験はないと(旧版)小学館文庫のあとがきで告白している。あと、まったく違った青春をおくっていたとも記している。
林静一は『赤色エレジー』以外でも多様(性的なものが多い)で先進的(難解でもある)なマンガ表現をしていたのだけど、それはまたの機会があれば。