「こんなユーザーは嫌だ」
インフォーメーションアーキテクトの宮内です。
前回軽くお茶を濁しましたが、久方ぶりの「IAできるかな」第4話目です。
今回のテーマは、ずばり「ユーザー」です。
社内のMTGでも、お客さんとの打ち合わせでも何かと「ユーザー」の4文字(ないしは「ユーザ」の3文字)を何かと口にしたり耳にしたりしますが、ここで質問です。
その「ユーザー」って誰?何者?
一言で「ユーザー」といっても、そのサイトやサービスによって使っている年齢層・性別・職業・利用環境等々は大きく異なります。そう、「世間一般」とか「世の中」とか「国民」といった、何か曖昧で漠然としたつかみどころの無い存在ではない………はずなのです。
ところが、この「ユーザー」という言葉がどういった人を指しているのか定義していないと、その曖昧さが故に、制作側が望むようなイメージで固められていってしまいます。
以前、このブログにも書きましたが、
ミーティングで度々「ユーザー」という言葉がもっともらしく出てきがち。
その「ユーザー」が何者なのかがそもそも怪しい。大抵、「ユーザー」の名を借りた「自分の考えの代弁」だったりします。
……ということなのです。その結果、「実際のユーザー」に必要とされていないようなサイトやサービスが出来上がっては本末転倒です。
自分たちの頭の中にいる「ユーザー」をまずは疑う必要があります。
限られた情報から推測の確度を上げる
では、どのように「実際のユーザー」に迫れば良いのでしょうか?
理想としては、ユーザーに直接インタビューしたり、実際にサービスやサイトを使ってもらいながら幾つかのタスクをこなしてもらい、その結果を分析することでユーザー像を固めていきたいところです。
……なのですが……。
弊社が担当している案件でも多いように、コンペの場合はそうはいきません。
提供される情報は非常に限定されていますし、クライアントへのヒアリングの機会も限られています。
また、スケジュール的に厳しいだけでなく、そもそも取れるか分からない案件に、どこまで費用を掛ければ良いのかという問題もあります。
コンペでなくても、スケジュールや予算の関係上、設計段階に時間的なコストが掛けられないものも多くあります。
かといって、クライアントへのヒアリングの結果だけから推測するのには無理があります。推測であるにしても、その確度を上げるアプローチが必要になります。
自分達が担当した案件では、例えばこんなアプローチを採っています。
アプローチ その1:身近な「ターゲット」に話を聞く
社内のスタッフや、そのスタッフの友達・友達の友達・家族・親戚等々、あらゆる「つて」を使って、そのサイト・サービスのターゲットに近い人達にインタビューをします。
自分たちにとって身近ではない存在がターゲットの場合(子供向けやシニア向けのコンテンツ等)、自分達の先入観だけで話を始めずに、実際のターゲットに近い人に話を聞きます。
身近な人であれば、わざわざリクルーティングする必要はありません。場合によってはFacebookのメッセージのやりとりで話を聞き出したりもします。
アプローチ その2:いっそのこと「ターゲット」に直接話を聞く
時間に余裕があれば、ターゲットに近い人達が集まる場に出向き、直接インタビューを試みることもあります。
弊社が担当したあるキッズサイトの場合、担当デザイナーが子供達が集まるフリースクールまで出向き、直接聞いた話をベースにアイデアを練り上げていきました。
アプローチ その3:雑誌や書籍を分析する
ターゲットとなる年齢・性別・職業の人がよく手にするであろう雑誌をまとめて入手し、特集や連載の内容を分析しながら傾向を見ていきます。キッズサイトの企画時は、社内に何かと子供向けのコミック誌や雑誌が積み上げられていることも。
ある案件では、「Yahoo!知恵袋」や「教えてgoo」といったQ&Aサービスや、TwitterやFacebookへの投稿も参考にすることがあります。
アプローチ その4:各種統計から推測する
例えば若い主婦をターゲットとしたサイトであれば、そういった世代に関する統計やアンケート結果を収集し、どういった悩みやニーズを抱えているのかを推測していきます。案件によっては「ぺるそね」というサービスを活用して傾向を掴むこともしています。
また、そのサイトが独自に行ったアンケート結果やアクセスログの解析結果からも推測していきます。
アプローチ その5:「事例紹介」から推測する
そのサービスを利用したユーザーの生の声が掲載されている場合、「そのサービスを利用する以前に」どのような課題や悩みを抱えていたのか、どういう経緯でそのサービスを使うことになったのかに着目し分析することがあります。
“ざっくりペルソナ”を作って共有する
こういった形で集めたデータを元に、大まかにユーザー像を固めていき、ざっくりとしたペルソナにまとめていきます。
………といっても、ペルソナと言える程の精度のものではなく、ユーザーを特徴付けるポイントを箇条書きでまとめたシンプルなものです。
ただ、こういったものが1つあるだけでも、「都合の良いユーザー」に振り回されることなく、誰に向けての何のためのサイトなのかをチームで共有しながら、プロジェクトを進めることができる……と思うのです。
ユーザー像がざっくりと固まったものの、ではそのユーザーがどのような行動を取るのかをどのように考えていくのかについては…………また改めて。
(第5話:「『ユーザー』はどこから来て、どこへ行くのか」……につづく)